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祐介物語1-15 父親のへそから

祐介物語
戦後(1946年 昭和21年)生まれの祐介という子が、たくましく生きた物語です。
戦争の傷跡が、街のそこここに残る墨田区(スカイツリーが間近に見える)を中心とした
昭和20年代後半から30年代の話です。
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父親に可愛がられることを
6人兄弟の4番目の祐介は、何もしなければ父親からも目立たない存在になってしまう。
祐介は、父親の気を引く術を小さい頃から身につけていた。
父親の機嫌がよさそうな時、胡坐をかいたところにちょこんと座り込む。
その胡坐の上で、父親が喜びそうなことを話す。そうすると、小遣いをもらえた。
父親の戦地の話
祐介は戦後生まれなので、父親の戦地のことは見ているわけがない。
しかし、父親が戦地での経験を話していたことを覚えていた。
「おれさー。戦争のことを父ちゃんのへそから見ていたんだよねー」
これで、父親はニコニコとなる。
戦争は不真面目に
戦地(南方)での父親のしてきたことを祐介が語る。
「お父ちゃん、戦争は大変だね。」
父親は夜の敵の見張りに立つ時があった。
「お父ちゃんは頑張ったよね。でも、真面目にはやらないこともあったよね。
真っ暗だし、森の中から変な音や鳴き声がして怖いから、途中で帰ってきたことがあったんでしょう。」

父親は賭け事が好きで、兵舎の中で戦友と花札をよくやっていた。
しかし、父親は人がいいから、相手から取りすぎてはいけないと思うと
結局、いつも父親が負けて、相手にお金を払うことになっていた。
払うお金がなくなると、内地にいる母親に"金送れ"と電報を送っていた。
「博打仲間に優しいお父ちゃんだったね。」と、祐介は言う。
本当は博打が弱い父であった。

父親はいつも、
「戦争は、真面目にやってはいけない。真面目にやると、人を殺すことになるから」と言っていた。
自分のいい加減さを正当化させる言葉であったが、祐介はそんな父親が何となく好きであった。
by gorongoronisomura | 2013-06-19 14:26 | 祐介物語